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執筆者
shimpei
細川真平 1964年生まれ。音楽ライター/エディター。
ジェフ・ベック、スティーヴィー・レイ・ヴォーン他のCD/DVDのライナーを手がける。また、音楽誌、ギター誌、ウェブ等にも幅広く執筆。
ギターは絶対ストラト主義。
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第17回 無趣味な男
2007年05月30日

「趣味は何ですか?」と訊かれると困る。
実は昨日も、初めて会った方からそう訊かれて困ったのだ。
う~ん、と考えてから、「……ギター、ですかね?」
でも、どうもしっくり来ない。
確かにギターを演奏することでご飯を食べているわけではないので、ギターは趣味だ。
でも、ギターやギタリストや機材などに関する原稿を書く仕事をしている以上、完全に趣味とは言いがたい。
ギター関係費用は、来年の確定申告では必要経費に入れちゃおうかと思うほどだ(ウソ)。
同じような理由で、「音楽を聴くことが趣味」とも言えない。
趣味で聴く場合はもちろんあるが、仕事で聴く場合も非常に多い。
CDに関しては、仕事上必要で買うものは必要経費に入れてますし。
じゃあ、読書は?
これも音楽と同じだ。
もの書きなどを生業にしていると、どんな本を読もうとそれが自分の血となり骨となり肉となっていくのだから、趣味で読んでいるという意識はどうしても希薄になる(かと言って、常に仕事という意識で読んでいるわけでもなく、そのへんは微妙なのだが)。
まあそれ以前に、出版業界の一員である以上、「趣味は読書」ではすまされないだろう。
『オーラの泉』風に言うと、「読書は趣味ではない、必然だ」という感じ(笑)。
はい、だから本も仕事で買ったものはちゃんと経費にしてます。
これ、本当に仕事のため? ともし税務署に訊かれようとも、ぼくが仕事のためといったらソレは仕事のためなのだ(笑)。

しかし、これじゃあまるで“無趣味な男”だ。
そう言われるとなんだか、365日、仕事が終わったら毎日まっすぐ家に帰る、謹厳実直なサラリーマンのような気がしてしまう。
ああ、絶対ぼくには無理だ(と言うか、無理だった……これは実証済みだ)。

「好きなことを仕事にしろ」派と、「好きなことは仕事にするな」派がいる。
ぼくは絶対に「好きなことを仕事にしろ」派だ。
なぜならそのほうがぼくにとっては楽しいから。
趣味を仕事にすると楽しくなくなるという人もいるが、悪いがぼくは楽しいのだ。
そして、楽しいと感じるのは、自分にとってそれが正しいことだからだと信じている。
だから、趣味を仕事にしてしまったことに関して、まったく後悔はしていない。
いや、それどころか、趣味と仕事がもっとグシャグシャになって、もっとすごいことをやれそうな気がしている。
どうであれ、困るのは「趣味は何ですか?」と訊かれたときぐらいのもんだしね(笑)。

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第16回 ギターが好きと言うために
2007年05月22日

先日、ある方と話をした。
ギター好きで、かなりのコレクションをお持ちの方だ。
話の中でその人は、「時間がなくて、最近はギターをまったく弾いてないんですよね」と言った。
がっかりした。
こういうことはよくある。
ギターが好きだ、と言うからこちらも興に乗って話をしていると、途中で「でも、時間がなくて最近弾いてないんですよ」。
この台詞を聞くと急に冷めてしまう。
だって、どんなに忙しくったってご飯は食べるわけでしょ?
トイレにも行くわけでしょ?
お風呂にも入るわけでしょ?
ならば1日に、たとえば5分、ギターを弾く時間が取れないわけがない。
睡眠時間を5分だけ削ればいいことだし。
もちろん、どうしてもその時間が取れない日だってあるだろうけど、たとえば3日間で5分ならなんとかなるんじゃないだろうか?
いや、1週間で5分でもいい。
そういう努力をした上で、ギターが好きだと言ってほしい。
弾いていないことを自覚して、そこに何の対処もしていないなら、それはギターが好きではないのではないか、とぼくは思ってしまうのだ。
いや、偉そうなことを言っているけれど、実はぼくも気持ちはすごく分かる。
ぼくも大学を出て就職してから10年以上、ほとんどギターに触れていなかった。
理由は……そう、忙しかったからだ。
誰もが理由にする、そのとおりだ。
仕事が忙しいと、時間が取れないということ以上に、ギターを弾く気が起きない。
何かの曲を練習しようなんてもってのほか。
そんな気力が湧いてくるはずがない。
そうなってしまう。
だからそのころぼくは、「ギターが好き」と人に言うのがすごくはばかられた。
弾いてもいないくせに、「好き」なんて言っちゃいけないような気がしていた。
言っていたけど……。
でも、なんだかそれって、自分のこともギターのことも裏切っているような気がした。
だから、30代終わりごろにもう一度バンドを組んでからは、忙しくてもギターを弾くための時間を捻出した。
じゃないと、元のようにはまったく弾けなかったし、実際に元に戻るには数年もかかった。
でもやっと、「ギターが好き」と再び自信を持って言えるようになった。
だって、弾いてるもん!
そんな自分の反省も込めて、こう言いたいのだ。
「ギターが好き」と言うなら、ギターを弾いてほしい。
少なくともギターを弾くための時間を作る努力はしてほしい。
「ギターが大好きなんですけど、どうしても1週間に5分しか弾く時間を作れないんです」と言う人となら、ぼくは夜を徹してギターの話をしたい。

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第15回 気になるヤツ
2007年05月14日

月曜の朝、3時半。
なんだかサイモン&ガーファンクルの曲名みたいだけどそうじゃなくて、今このときがそうなのだ。
さっき、原稿を1本書き終わった。
本当は金曜が締め切りだったのだが、金曜いっぱいでいいということは、月曜の朝(昼?)に編集者が会社へ行ったときに原稿が来ていれば同じことだ、と勝手な解釈をして、締め切りを自主的に延ばした(笑)。
いつも基本的には締め切りを守るぼくなので、これぐらいは許してもらえるだろう。
ぼくが編集者だったころは、「これ以上遅れたらページが白くなりますよ!」と半分脅しの電話をせざるを得ないことだってよくあったのだ。
それに比べれば、ぼくは優秀なライターだ。
少なくとも、締め切りを守ることに関しては(笑)。

さて、その原稿はジェフ・ベックの5月に出るライヴ盤に関してのものだった(アルバムのライナーもぼくが執筆している)。
それで、ジェフのライブの音作りについて自分なりに調べたり、それより何より何度も何度も音源を聴き返すうちに、気になるエフェクターが出てきた。
マエストロのリング・モジュレーター。
リング・モジュレーターというのは、原音の音程を変えて出力するエフェクターで、強くかけすぎるとわけがわからなくなる、一種の飛び道具。
だが、穏やかに使うと微妙な音の変化を作ってくれて、なかなかいい隠し味になる(穏やかに、かつ上手く使えば、だ)。
ジェフ・ベックは、これをけっこう使っている。
たとえば『ワイアード』の「グッドバイ・ポーク・パイ・ハット」のような、静か目の聴かせるタイプの曲でも使っているし、ハードな「蒼き風」でも使っている(と思われる)。
また、同時期の『ライヴ・ワイアー』でも聴ける。
'05年の日本公演でも、しっかりスタンバイされていた。
ただし、ジェフの足元にはオーヴァードライヴとワウしか置いていなくて、それ以外はステージ脇でギター・テクが操作するようになっている。
ということもあって、なかなかどのエフェクターをどのタイミングで使っているかが判断しにくいのだ。
だが、ビリー・コブハムのカヴァー「ストレイタス」や「蒼き風」ではリング・モジュレーターを使っていたと思う。
それ以外でも、曲の中の一部などで、けっこう使われていたのではないかと思うのだ。
それは、今月出る『ライヴ・ベック'06』を繰り返し聴いていて、より思うようになったことだ。
だが、自分で試してみないと、どこでどう使われているのかがいまひとつ判然としない。
というわけで、リング・モジュレーターがすごく欲しくなってきた。
マエストロ製は今やヴィンテージ・エフェクターで手が出ない。
それ以前に、タマがない。
現行品があるのはMOOG。
そう、あのシンセを作ったMOOGだ。
リング・モジュレーター自体、もともとシンセ用エフェクターという出自のようだし。
ああそうか、これもヤン・ハマーがジェフに教えた悪い遊び道具だったということか(笑)。
しかし、MOOGのも高いな……。

※写真はマエストロのリング・モジュレーター。

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第14回 転がる石のように
2007年05月03日

ゴールデンウィーク、皆様はいかがお過ごしでしょうか?
ぼくは特に遠出の予定はなし。
出かけても近場で、基本的には家族とのんびりと過ごしている。

それはそうとして、今日は朝から、背中の右側が少し痛む。
寝違いか何かだとは思うのだが、少し不安。
というのは以前、“石”をやったことがあるからだ。
尿管結石。
もう8年ほど前になる。
まだ会社勤めをしていた。
ある日会社で、背中が猛烈に痛くなった。
我慢できなくなり、「ちょっとすみません……」と、会議室にこもり、椅子に横たわる。
しばらくすると治まった。
「ふぅ、なんだったんだろう今のは?」
席に戻って仕事をしていると、また痛みが襲ってくる。
うぅ……とまた会議室へ。
その繰り返し。
これは異状だ、と思った。
ぼくの体の中で、何かが起こっている……。
顔面蒼白で、冷や汗がタラタラ。
もうダメだと思って、会社の近くの小さな病院へ駆け込んだ。
簡単な診断の結果、「筋肉痛でしょう。湿布を出しときます」とお年寄りの先生は言った。
窓口で湿布を受け取りながら、「絶対ヤブだ、あの医者」とぼくは思った。
そのまま会社を早退して、タクシーでいったん帰宅。
しばらく小康状態になったので横になっていた。
一応、背中に湿布も貼った。
「本当に筋肉痛で、湿布のおかげでこのまま治っちゃったりして。あの医者、ヤブじゃなかったりして」と淡い期待を抱きつつ。
だが、そのうちにまた痛みの波が押し寄せ始めた。
しかも、前よりひどい。
死ぬほど痛い。
と言うより、いっそ殺してくれ! と思うほどの痛みだ。
もう夜になっていた。
家内に車を運転してもらい、総合病院の救急窓口へ向かった。
救急の担当医は、医大を卒業して間もないのではないかと思われる、若い女医さんだった。
しかも……美人。
触診をした彼女は、「石ですね。尿管だと思います。痛み止めを出しておきます。それで今日は我慢できるはずですので、明日の通常の時間にもう一度来院してください」とハキハキと言った。
ホッとした。
原因が分かったという安堵と、薬でとりあえずこの痛みから解放されるという安堵の両方だ。
ちょっと間をおいてから、女医さんは口を開いた。
それまでのハキハキさとはうってかわった、もじもじした様子で。
「あの、尿管結石なのは間違いないとは思いますが、可能性としては睾丸のガンも考えられないことはないんです。ですので……もしよろしければ、睾丸もお見せいただけますか」
彼女はぼくの目を見ずにそう言う。
一瞬の沈黙。
「ええと、あの、けっこうです」
ぼくは答えた。
医者に対してこの答え方でよかったのかどうかは、いま考えてもよく分からない。
トンカツ屋でご飯とキャベツのおかわりを勧められたわけじゃあるまいし。
でもそれに対して、「ハイ」と女医さんが小さく答えたのも、いま考えると微妙に変だ。
さて、翌日はヤブではない、と言うよりも逆に、すご腕おじいちゃん医師に診断してもらった。
間違いなく尿管結石で、それほど心配することはない、水をいっぱい飲めば出るから、という診断だった。
そのおじいちゃん医師に関しても語りたい物語はあるのだが、それはまたの機会にしたい。

さてこの痛み。
“石”じゃないよな。
今日のは本当に筋肉痛だよな……。

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