ギターって、いちばん人の体温が伝わる楽器じゃないかと思う。
スタンドに立てかけたギターを手に取る。
抱きかかえる。
この時点では、ギターは少しひんやりしている。
弾きはじめる。
最初は優しく、そして、ぎこちなく。
まるでお互いの今日の調子を確認し合いながらボールを行き来させるピッチャーとキャッチャーのようでもあるし、今日のデートを最高のものにしたいと願っている若い恋人同士のようでもある。
いつの間にか、夢中になって弾いている。
ピッチャーはキャッチャーのことを信頼し、ただ彼のミットにボールを投げ込むだけ。
若き恋人たちは、自分が心から楽しむ姿が、相手を心から楽しませていることに気づき始める。
ひんやりしていたはずのギターは、もうぼくの体温と同じになっている。
ギタリストはどんなときでもギターを弾く。
うれしいときも、悲しいときも、何があっても、何がなくても。
どんなときでも、ギタリストの体温はギターへ伝わる。
それとともに、喜怒哀楽を共有できる。
慰めてくれることもあれば、叱ってくれることもある。
黙って話を聞いてくれることもあれば、盛り立ててくれることもある。
励ましてくれることもあれば、一緒に泣いてくれることもある。
だから、ぼくはギターを弾くんだ。