先日、NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』の司会を務めるなどTVでも活躍している、脳科学者の茂木健一郎さんの講演を聞いた。
脳と子どもの創造性に関する内容で、非常に面白く、かつ、ためになった。
さて、その中で印象に残ったのは(最初から最後まで、印象に残る話ばかりだったのだが)、「何かを行ってうれしいと感じると、脳内にドーパミンが分泌される」ということ。
これはよく言われているとおりなのだが、肝心なのはそのあと。
「うれしいと感じ、ドーパミンが出ると、その行動は強化される」。
これはどういうことかというと、ドーパミンが分泌されると、脳は心地よい状態になる。
一度そうなると、脳はその状態を再現しようとする。
そのために、その行動に関する脳内の回路を自然と強化するようになる。
その回路を強化する動きのことを「強化学習」と呼ぶのだそうだ。
ギターがうまくなる過程も、まったくこれと同じだと思った。
最初からうまく弾ける人などいない。
だが練習するうちに、たとえば昨日までできなかったチョーキングがふとできるようになる。
「おー、やった、できたじゃん!」
このとき、脳内にはドーパミンが噴出している。
そして脳はこの快感を再現しようとして、チョーキングという行動を行った回路を強化するのだ。
そして、もっとうまくなるともっとドーパミンが出てもっと回路が強化され、そうするともっとうまくなってもっとドーパミンが出てもっと回路が強化されてもっとうまくなり……。
この繰り返し、つまり「小さな成功体験」の積み重ねによって、人はギターを習得していくのだ。
そして、これはぼくの想像だが、小さな成功体験を積み重ねていくうちに、どこかで大きな飛躍があるのだと思う。
総合的に、そして圧倒的に回路が強化される瞬間、とでも言うか。
ジェフ・ベックも、エリック・クラプトンも、ジミ・ヘンドリックスも、Charも、みんな小さな成功体験を積み重ねたに違いない。
きっと、短期間で数多くの。
それが大きな飛躍へとつながったのだと思う。
その大きな飛躍の結果を、人は「天才」と呼ぶのだろう。