先日、ある方と話をした。
ギター好きで、かなりのコレクションをお持ちの方だ。
話の中でその人は、「時間がなくて、最近はギターをまったく弾いてないんですよね」と言った。
がっかりした。
こういうことはよくある。
ギターが好きだ、と言うからこちらも興に乗って話をしていると、途中で「でも、時間がなくて最近弾いてないんですよ」。
この台詞を聞くと急に冷めてしまう。
だって、どんなに忙しくったってご飯は食べるわけでしょ?
トイレにも行くわけでしょ?
お風呂にも入るわけでしょ?
ならば1日に、たとえば5分、ギターを弾く時間が取れないわけがない。
睡眠時間を5分だけ削ればいいことだし。
もちろん、どうしてもその時間が取れない日だってあるだろうけど、たとえば3日間で5分ならなんとかなるんじゃないだろうか?
いや、1週間で5分でもいい。
そういう努力をした上で、ギターが好きだと言ってほしい。
弾いていないことを自覚して、そこに何の対処もしていないなら、それはギターが好きではないのではないか、とぼくは思ってしまうのだ。
いや、偉そうなことを言っているけれど、実はぼくも気持ちはすごく分かる。
ぼくも大学を出て就職してから10年以上、ほとんどギターに触れていなかった。
理由は……そう、忙しかったからだ。
誰もが理由にする、そのとおりだ。
仕事が忙しいと、時間が取れないということ以上に、ギターを弾く気が起きない。
何かの曲を練習しようなんてもってのほか。
そんな気力が湧いてくるはずがない。
そうなってしまう。
だからそのころぼくは、「ギターが好き」と人に言うのがすごくはばかられた。
弾いてもいないくせに、「好き」なんて言っちゃいけないような気がしていた。
言っていたけど……。
でも、なんだかそれって、自分のこともギターのことも裏切っているような気がした。
だから、30代終わりごろにもう一度バンドを組んでからは、忙しくてもギターを弾くための時間を捻出した。
じゃないと、元のようにはまったく弾けなかったし、実際に元に戻るには数年もかかった。
でもやっと、「ギターが好き」と再び自信を持って言えるようになった。
だって、弾いてるもん!
そんな自分の反省も込めて、こう言いたいのだ。
「ギターが好き」と言うなら、ギターを弾いてほしい。
少なくともギターを弾くための時間を作る努力はしてほしい。
「ギターが大好きなんですけど、どうしても1週間に5分しか弾く時間を作れないんです」と言う人となら、ぼくは夜を徹してギターの話をしたい。