空間系のエフェクターの選択は難しい。
色々種類はあるけれど、楽器店の在庫は限られているので試奏にも限界がある。つまみが多すぎて操作が難しそうだ。歪み系のエフェクターと比べ、レビュー記事も少ない。その上価格が高いので購入に度胸が必要だ。
優れものでありながら、あまり楽器店で見かけないレアなディレイのレビューをお届けしたいと考えたのはそんな理由からだ。ディレイ選びの参考にしていただければ幸いである。
今回レビューを試みるカール・マーチンの「ディレイラ」とその上位機種「ディレイラXL」は高機能ディレイとしてはもはやクラシックの部類に入る。
なんといっても一番の特徴は、テープ・エコーの「セカンド・ディレイ」を再現した「スラップバック」がついていること。
メインのディレイ・サウンドの内側に更に細かいディレイが入ることで、音の奥行きが格段に増すのだが、ストンプ・ボックスでこの機能を再現したものは少なく、仕方なくディレイを2台接続した経験のある人もいることだろう。これが1台で済み、オン・オフも可能、しかもスラップバックのタイミングも調整可能(XL)なのだから、素晴らしい。
また、タップ・テンポが可能(XL)、というのも魅力的だ。
基本的なディレイ・サウンドは十分に太く、ウォームだ。極端に音が劣化するということでなく、適度にハイが丸くなったサウンドだと思う。ヴィンテージ・テープ・エコーの再現といううたい文句にも納得できるサウンド・クオリティだと思う。
・DeLayla
・DeLayla XL
レビューではそれぞれのサウンドの試奏のほか、デジタルディレイや他のアナログディレイとの比較も行ったので、ぜひご覧いただきたい。
その他の特徴は以下の通り。
・MONO IN / MONO OUTである。凝った音像造りを試みたい向きにはやや不満が残る。
・AC100V駆動である。トランス内蔵のため重量も800gを超える。しかしそれによるサウンドの太さが本機の魅力の一端であることは否めない。
・ディレイタイムは20〜1000ms。
デジタル/アナログハイブリッドのディレイや、デジタルでもアナログライクなサウンドを作れるディレイ、プリセットメモリやルーパー機能を装備したディレイなど、多機能なディレイが百花繚乱の昨今、やや見劣りする部分があるかも知れないが、本当に自分の欲しいサウンドが明確にわかっている人には機能が絶妙に取捨選択された1台として候補に挙げられるのではないだろうか。機能、サウンド、操作性のバランスに優れた1台であり、隠れた名機、もしくは「早すぎた名機」という思いを強くした。
実勢価格はDeLaylaが35000円前後、DeLayla XLが41000円前後といったところ。
昨今の円高を考えるといささか高価だが、これは致し方ない。
また、すでに発売から時間が経っているため、在庫を見つけるのがなかなか難しい。発見したら幸運だと思ってぜひ試奏してみて欲しい。