タイトルはLEGEND OF MASTERPIECE。
開催されたのは3月9日(金)、横浜BLITZ。
稲葉政裕(g)を中心とするFAR EAST CLUB BAND(山内薫b、栗尾直 樹key、木村万作ds、園山光博sax)をホストに、近田潔人(g)、 葛城哲哉(g)、長井ちえ(g)、西慎嗣(g)、そして根本要(g)という 豪華な面々をゲストに迎えるというスタイルである。
比較的年齢層の高いオーディエンスで一杯の場内。
開演前のBGMからThe Band、ELP、Led Zeppelinなどのナンバーが 流れ、いやでも気分は盛り上がる。
腕利き揃いのメンバーだけに、そのパフォーマンスが楽しみだ。
ホスト・稲葉政裕のリードではじまったスタートチューンはオールマンの「You don’t love me」。
本家のものと比べて若干早めのテンポを、リズム隊が突っ走ることもなくしっかりと刻むなか、参加メンバーが順番にソロをとるというお約束のパフォーマンスである。
トップバッターの近田潔人がいきなりジャズマスターの伸びのあるファットな音を繰り出す。
次は、SGを抱えた葛城哲哉。輝くようなトレブリーな音をこれでもかとぶつけて来る。
なるほど、ロック・クラシックを演るイベントらしく、今風のエフェクターこてこてではなく、ギターの持ち味を生かしたサウンドの持ち主をメンバーにチョイスしたということか。
続いて長井ちえ。途中でカッティングの嵐を見せるが、その右手首の柔らかいこと。
そして西慎嗣、絶妙に歪んだストラトをぐいぐい鳴らす鳴らす。
オープニングから、観客はノックアウトされてしまった。
一旦ゲストが全員ステージを去り、稲葉政裕FAR EAST CLUB BANDによるCrusadersの「Spiral」がブリッジとして短くプレイされる。もちろん稲葉はES335に持ち替え、ウォームな音色で伸びやかにフレーズを奏でていた。
さて、ここからはそれぞれのゲストによるパフォーマンスの始まりだ。
最初に登場した近田潔人は、ジャズマスターからゴールドトップのフルアコに持ち替えて、聴き覚えのあるフレーズを弾き始める。乾いたストレートなギターとサックスは、50〜60年代トゥワンギー・ギターの名手として最近改めてリスペクトが集まるDuane Eddyのナンバー。
2曲目は、CCRの「Have you ever seen the rain」。
チョイスする曲といい、ギターといい、なかなかのギターフェチぶりである。
グランドファンクの「Heart Breaker」のジングルとともに登場したのは、SGマン、葛城哲哉。
いわゆる低迷期を経た後のスマッシュヒット「We're an American band」と「The locomotion」を披露してくれた。
当時、どんどん複雑化していくブリティッシュ・ロックに対して、シンプルの極み、みたいな言い方をされていたグランドファンクだが、こういうシンプルかつノリノリ路線がこういうイベントにはピッタリ。
葛城も演奏していて本当に楽しそうである。
続いての登場は、千年コメッツでのデビュー以来はやウン年、数々のセッションやライブサポートを経てベテランの余裕を感じさせる長井ちえ。
曲は、The Doorsの「Light my fire」、Elvis Costelloの「Alison」、The Beatles の「Helter-skelter」といったポップ路線。
スレンダーな見た目なのだがフレーズは意外に男っぽく、ギターサウンドは野太い。その音を作っていたのは日本のメーカーFREEDOM CUSTOM GUITAR RESEARCHのもの。
マホガニーボディにいわゆるソープ・ハムバッカーを積んだ1本だ。
4番手は、Steely Danの「Josie」のジングルに乗って現れた西慎嗣。 Steely DanからいきなりCreamの「White room」で度肝を抜かれる。 ソロが、ままLive Volume2を再現していたのに、おもわずニンマリしてしまう。 そしてその後、改めてプレイされたのが、Steely Danの「Kid Charlemagne」。名盤『The Royal Scam』の冒頭を飾る名曲だ。
唄はもちろん、ラリー・カールトンばりのソロも難なくこなす、意外な(?)一面を見せてくれ、最後には、稲葉政裕との相互タッピングまで披露してくれた。
「Kid Charlemagne」が終わったところで、スペシャルゲスト根本要の登場である。
開口一番「良いイベントだけどね、MCが短いよ。」に場内爆笑。
というわけで、お約束のMCタイム、根本教授によるクラシカルロックについての講義がはじまる。
「Kid Charlemagneのソロをコピーするのに1ヶ月かかった」by西慎嗣や「9thや13thが出てきて面食らった」by稲葉政裕など、他のメンバーの告白もはさみながら、「クラプトンはSteppin’outというブルースナンバーに無理矢理Hideawayという曲名を付けて、作者のFreddie Kingに印税をプレゼントした」などなど、興味深い話も飛び出し、会場のオーディエンスも思わずうなずく。
その根本要、近田潔人を交えてプレイされたのは、Eagles の「Life in the fast lane」。
根本のストラトは乾いたトレブリーなサウンドによるカッティングを決め、稲葉は野太いスライドを唸らせる。何本ものギターが巧みに織り込まれたこのナンバーはまさに今夜のステージにピッタリであった。
ステージは、そのまま根本要のワンマンショー状態に。
MCの話題にのぼったFreddie Kingの「Hideaway」に続いて3曲目は、Mountain の「Mississippi Queen」。
最高のシャウトを聴かせてくれる。次は「Rockにもこんなしみじみとした名曲があったことを知って驚いた」by 根本要という、「Theme for an imaginary western」。
もともとはJack Bruceの曲で、Creamのプロデューサであった
Felix Papalardiが柳の下のドジョウを狙って結成したMountainがカバーした名曲だ。このあたりの逸話も根本要は、しっかりと解説。
最後はかの名曲、Johnny & Edgerの Winter兄弟の名サイドマンとして活躍したRick Derringer の「Rock and roll hoochie koo」で根本ショーを締めくくった。
気がつけばイベントはあっという間にエンディング。
ここはゲスト抜きで、FAR EAST CLUB BANDがThe Band の「The weight」をしみじみと奏でる。
ボーカルは、もちろんドラムスの木村万作から、各メンバーへの「まわし」。
CrusadersにThe Band、まったく器用なバンドである。
アンコールThe Doobie Brothers の「Listen to the music」で、場内の盛り上がりは最高潮に。
「もう1曲」を求める客席の声に応え、アンコールとしてプレイされたのはオープニングナンバーの「You don’t love me」。
どんどんテンションが上がっていく白熱のギター・ジャムが3時間に渡るイベントのフィナーレを飾った。
それぞれが「自分の音楽」を持っていながら、それとは異なる、楽しみとしての、あるいは憧れのロック
を演奏し、歌う。
仕事としてのステージが終わった後に、メンバーがくつろいで演るジャムセッションをAfter Hoursと呼ぶ
らしいが、今回のLEGEND OF MASTERPIECEというイベントも、そういうものなのかもしれない。
そう考えつつ、横浜BLITZを後にした。
「久々にCD棚を引っかき回してみるかな。
ギターの弦も新しく張り替えてみよう…」しばらくロックから遠ざかっていた大人たちをそんな気にさせる、 実に楽しいイベントであった。


第2弾というからには、第3弾もあるはず。ぜひお見逃しなく!
セットリスト

LEGEND OF MASTERPIECE
3/9(Fri)@横浜BLITZ

You don’t love me The Allman Brothers Band
Spiral The crusaders
A melody of the twangy Duane Eddy
Have you ever seen the rain Creedence Clearwater Revival
We’re an American band Grand Funk Railroad
The locomotion  Grand Funk Railroad
Light my fire The Doors
Alison Elvis Costello
Helter-skelter The Beatles
White room Cream
Kid Charlemagne Steely Dan
Life in the fast lane Eagles
Hideaway J.Mayall & The Bluesbreakers
Mississippi Queen Mountain
Theme for an imaginary western Mountain
Rock and roll hoochie koo Rick Derringer
The weight The Band
Listen to the music The Doobie Brothers

 

本サイトで使用されている、写真、画像、文章等を無断転用することを禁じます。