1月31日の目黒ブルースアレイ。大喝采の中、ステージに上ったとたんに日本語で挨拶し、大相撲の話を始めるクリス。それをにこやかに聞いているBLUESTONEのメンバーたち。そんな和やかな雰囲気は、1曲目の「Back In Town」で一気に狂おしいほどのブルース・ロックの世界へと様がわりする。彼らの最新共作アルバム『396』のオープニングを飾るアップテンポで、軽快なナンバーだ。2曲目の「Put Up Or Shut Up」も同アルバムから。パワフルでタイトな、最強のリズムを叩き出す高橋泰三のドラムと高木太郎のパーカッション。そして、正確さとアグレッシヴさに色っぽさまで加えた小笠原義弘のベース。その上で住友俊洋のギターと、クリスのヴォーカル&ギターが自由自在に躍る。
今回、住友はブラウン・サンバーストのギブソン・カスタム・ショップ製レス・ポールを使用。最近入手したものだそうで、デュアン・オールマンの愛機を思い起こさせるルックスをしている。一方のクリスはグリーンのエキゾティックがメインだ。
「Big Legged Woman」は、クリスのデビュー・アルバムに入っていたフレディ・キングのカヴァー。圧倒的なファンクネスがたまらない。クリスのソロ途中でのモジュレーション系エフェクターの使い方の上手さも特筆しておきたい(この曲に限ってのことではないが)。
再び新作から「Angelina」、そしてクリスの「Do It Again」を挟んで「396」へと続く。各メンバーのプレイの切れ味がどんどん増して来ている。それによって、会場の空気の密度が濃くなったような気さえする。
次の「The Ballad Of Kohima Ridge」も『396』から。この曲ではどっしりとした演奏ぶりがいい。そして、もっとゆったりとした「She Cries」では、さらにスケール感がアップした。クリスの歌うメロディーが感動的に響き渡る。
「Chattahoochee Side」での住友のスライドは聴きものだった。なんと言えばいいだろう、唸っているのに歌っている……そうとしか表現のできないプレイだ。 「Satisfy」、「People Say」とクリスの曲が続く。しかし、“彼らの曲”と言ってしまってもいいほどに、体に馴染みきっている様子を感じる。続く「Funky Mama」、「Luck Shine On Me」は、“彼らの曲”。「Funky〜」は、タイトルどおりにファンキーながら、ジャズ・ロック的展開を見せるインスト・ナンバー。彼らの懐の広さを感じさせる1曲だと思う。「Luck Shine〜」は大きなグルーヴを持ったシャッフル・ナンバー。思わず体が横揺れしてしまう。
ここでまた、「The Best I Can Do」、「Leave Her Be」とクリスの曲が続く。これらは昨今の彼の充実ぶりを象徴しているような作品だと思うが、BLUESTONEとともに演奏することで曲の魅力が倍増している気がする。「Leave Her〜」では、住友のスライドに目を見張らされた。こういう重めのシャッフル・ナンバーでの彼のプレイには、デュアン・オールマンの魂を感じないわけにはいかない。
再び『396』から「Silverspoon」、そしてその勢いのままに、本編最後の「My Way Down」へと突入する。クリスの代表曲のひとつであり、BLUESTONEとの演奏でもすっかりお馴染みとなったナンバーだ。
アンコールは「Still I Think Of You」と「Give It Back To Me」。これらも『396』収録曲だ。他の追随を許さないグルーヴ感とともに、ヒネリと小技も利かせた、彼らならではのナンバーだ。この2曲で観客を圧倒し尽くし、彼らはステージを降りた。