柳ジョージのツアー“LIVE 2008 〜The Roots〜”の初日、1月24日、東京・STB139 スイートベイジルでのライヴを観た。
このツアーは、久しぶりにバック・バンドを従えてのもの。
ゴールドのストラトキャスターを抱えてステージに登場した柳が弾き始めたのは、クリームの「Sunshine Of Your Love」のイントロだった。
ツアー・タイトルからも分かるとおり、自分のキャリアを振り返り、ルーツを確認するという大事な意味を持つライヴだということが、1曲目から伝わってくる。
前進するために、来し方を確認するライヴ、と言ってもいいのかもしれない。
柳のストラトの音は、ミドルが張り出し、艶があって太い。
ここ何年かのエリック・クラプトンのライヴでの音色に非常に近いものがある。
そして彼のボーカルもジャック・ブルースではなく、円熟味を増した最近のクラプトンに近い。
「荒ぶる天使たち」「センチメンタルナイト」と続き、そのあとはサイド・ギタリストがアコースティック・ギターに持ち替え、セミ・アコースティック・セットとなる。
ここでは、「同じ時代に」「酔って候」「For Your Love」「10ノットクラブ」と、バラードでの柳のボーカルの魅力を堪能させてくれた。
「酔って候」での味わいは天下一品だし、「For Your Love」では歌詞の切実さが胸に染みてくる。
ギター・プレイと相まって、まさに柳ジョージにしか描けない風景が、そこには現れ出ていた。
MCを挟んで、さらに同じ形態で「さらばミシシッピー」「本牧綺談」「FENCEの向こうのアメリカ」「コインランドリーブルース」。
どんどん深く彼の世界へといざない込まれていく。アメリカへの憧れと、日本人としてのアイデンティティ、その両方の視点から綴られる、柳ジョージならではの世界へと。
メンバー紹介を挟んで、サイド・ギタリストもエレキに戻り、またハードなサウンドへ立ち返る。
まずはアップテンポで「テネシー・ワルツ」を。明るくて、派手で、ニューオーリンズの匂いが立ち昇ってくるような演奏だ。柳のギターも、より滑らかさを増してきた。
次は一転してスロー・ブルース、「I Got A Mind To Give Up Living」。ポール・バターフィールドが残した名曲だ。大木トオルとアルバート・キングによる名演も忘れられない。
切ないブルースだが、柳の歌とギターは切なさの中にきらめく強さを表現している。
堂々とした演奏ぶりを見せてくれた「コペンハーゲンパーク」、そして「青い瞳のステラ、1962年 夏・・・」へ。
ここはもう柳の真骨頂である渋いボーカルに、うっとりするほかない。
「Money」「歌舞伎」のあと、本編最後となる「Forever Man」。エリック・クラプトンの85年の大ヒット曲だ。
ここでは柳の歌もギターも、まさにクラプトンそのものだった。
クラプトンに憧れ、クラプトンを敬愛する彼の素直な気持ちが伝わってきてとてもうれしかったし、彼自身も非常に楽しそうに演奏しているのが印象的だった。
そしてアンコールはこれしかないだろう。「雨に泣いてる」だ。
久しぶりのバンド・スタイルでエネルギッシュに歌い、ギターを弾きまくったあとだけに、正直なところ疲れが見えていた。
けれども、最後の力を振り絞るように、彼はこの曲を歌い、弾いた。歌いたい、弾きたいという気持ちが、切実に感じられる演奏ぶりだった。
上手く演奏したいとか、よく見られたいではない。とにかく歌いたい、弾きたいという気持ち。実はこれこそが彼の“ルーツ”だったのかもしれない。
きっと彼はこの日、自分のルーツにたどり着いた。