ライヴ・レポート
photoROCK+フラメンコ=ROCKAMENCO。この、いささかベタなネーミングの、しかし音楽的には面白そうなユニット。期待に違わず、生身の人間が奏でる音楽の素晴らしさを堪能させてくれるステージだった。
12月20日、東京・鶯谷の東京キネマ倶楽部。約2ヶ月に及ぶ全国ツアー「ROCKAMENCO Tour VOLANDO!」の最終日。場内は女性客が7割。元々はフラメンコカンタオール(ボーカル)KSK Aritaとブルースロックギタリストichiroのユニットからスタートしたというこのグループだけあり、ポップ・ミュージックのライブと異なり、かなり年配の、恐らくはフラメンコ愛好者であろう年配の女性が目立つ。
華やいだ歓声の中登場したグループの奏でるサウンドは思いのほかロックである。2ドラム(うち1人SudaPonyが使うのは、ちょっと風変わりなパーカッションとドラムの融合したようなもの)ということもあり、力強いグルーブが感じられる。ただしそのリズムはやはり独特のフラメンコ風味。ラテンロックという範疇でいえば、その大先輩にサンタナがいるけれど、あちらが南米系のそれだとすれば、ROCKAMENCOのリズム、そしてメロディのセンスはヨーロッパ風ということになるのだろうか。キーボードがないために、かえってソリッドになっているアンサンブルや、フラメンコカンタオールならでは迫力のボーカルがROCKAMENCOの個性を際だたせている。
そして何といってもこのグループの魅力は、ichiroのエレクトリック/ロック・ギターに対して渡り合うアコースティック/スパニッシュ・ギター2人という、ギター・ミュージックとしてのそれである。
ichiroは主にフィンガー・ボードに「ROCKAMENCO」とインレイされた金沢のEXTREME GUITARS製カスタム・ギターをマーシャルに接続。THE SONSの時とはまた違った、ややモダンなサウンドを奏でていた。ソロ以外のリフやカッティングなど、楽曲の「ロック担当」はほぼ彼1人なので、足下の大きなペダルボードを頻繁に踏んでいたのが印象的だった。
対する2人のスパニッシュ・ギタリスト、DanとDaisukeは想像通りのハイ・テクニシャン。特にDanはフロントマンとして、ichiroとソロ・バトルを繰り広げる見せ場が多々あった。プラグインしたガット・ギターのトーンは(爪の)ピッキングやタッチによってかなり幅広いもので、アンサンブルに埋もれない粒だちのいい音であった。
ステージは1stアルバム「Pasion」からの楽曲やシングル「Morena」「Viva Amor」などを中心に、誰もが知っている洋楽カバー曲を交えた構成。どうやらおなじみの曲がどのようにROCKAMENCOアレンジされるかも、彼らのステージを観る楽しみの1つのようだ。この日プレイされたカバーは「Wild World」(CAT STEVENS)、「Listen To The Music」(DOOBIE BROS)など。年末のステージとあって、クリスマス・ナンバーのメドレー(もちろんROCKAMENCOアレンジ)も披露され、会場は明るい雰囲気で最高潮に。ライブで必ずラストを飾るという2ndシングル「Esperanza」で一旦幕を閉じた。2回のアンコールを行い、最後にはイタリアン・ポップスの定番「Volare」をジプシー・キングスよりはるかにロックなバージョンで熱演、場内を大合唱の渦に巻き込み、ステージを締めくくった。
ギターという楽器の重層的な魅力、そしてフラメンコとロックの融合という面白さを十分に味わえたステージではあったが、楽曲のリズムやアレンジのバリエーションがやや乏しいかなという印象も残る。もっと泥臭いフラメンコに振り切ったり、逆にロック的なパワーを押し出したナンバーを取り混ぜてもいいのでは、というところだ。それと、ギターを中心としたインストルメンタル・ナンバーもぜひ聴きたかった。かつてのスーパー・ギター・トリオではないが、「火の出るような」インタープレイ、というのをROCKAMENCOの引き出しに加えてもいいのではないだろうか。それは恐らく、ファン層を広げることにも繋がると思う。

ROCKAMENCO オフィシャルホームページ >>
機材紹介
1 SE~Luna y Viento
2 Morena
3 No Satisfied
4 Happy Monday Morning
5 Viva Amor
6 Wild World
7 花
8 Solo Section
9 クリスマスメドレー
10 La Paz
11 Please Please Please
12 Listen To The Music
13 バイラ!バイラ!
14 Passion
15 Esperanza

Encore
1 Wasabi
2 I'll Be There

W Encore
3 Volare

セットリスト
・ ギター
石川県金沢市のギター・ショップ「Extreme Guitars」のカスタム・ギター。
2ピースのアルダー・ボディにセル・バインディング。バーズ・アイ・メイプルのネック。指板に大きな「ROCKAMENCO」のインレイ、ヘッドにも「ichiro」のトレードマークのインレイが入れられている。全体的にストラト、レスポール、テレキャスターの要素を取り混ぜたということで、ピックアップはハムバッカー×2。ブリッジプレートにはテレキャスター用のものを短くカットして装着。サドルもテレ用のブラス製のものを使用している。
ギター
・ アンプ
MARSHALL 1987X。元々ichiroが所有している1968年製のPlexiではなさそう。インプットはチャンネル・リンクさせず、セッティングはPRESENCE:12時,BASS:3時、MIDDLE:4時、TREBLE:8時、HI-TREBLE:9時、NORMAL:9時。
キャビネットは型番不明。ichiro氏によると、オルガンなどに使用するものではないか、とのこと。クローズド・バックで12inchスピーカーが2発搭載されている。
アンプ
・ エフェクター・ボード
THE SONSで使っているものとは全く異なる、かなり手の込んだもの。エレキ、アコギ双方の信号をここで切り替えている。各エフェクターはCAJ製のループ・スィッチャーを経由。曲によってプログラム・チェンジし、サウンドを切り替える。エフェクターではボードのほぼ中央、シルバーの筐体に4ノブのボックスが珍しい。これは福岡のギター・ショップFINE GUITARSのオリジナル・オーバードライブ「Technician Over Drive」。LANDGRAFFのDynamic Over Driveを解析し、独自のアレンジを施したもので、ギターのボリュームに対する音色の追随が素晴らしいとか。
エフェクターボード


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