80年代のポピュラー・ミュージックを語るとき、Chic(シック)の存在は欠かせないだろう。70年代後半からのディスコ・シーンを席巻したファンキーでセクシーな“Chicサウンド”は、それまでのただ踊るためだけのディスコ・サウンドを、お洒落なダンス・ミュージックへと変貌させた。
そして「Le Freak(おしゃれフリーク)」「Good Times」などのヒット曲を次々と生み出していたナイル・ロジャースのもとには、世界中のアーティストからプロデュースのオファーが殺到。今ではサウンド作りの基本となっているプロデューサー主導のスタイルをいち早く確立し、数々のヒット曲を作り上げた。代表曲には、マドンナ「Like a Virgin」、デビッド・ボウイ「Let’s Dance」、ダイアナ・ロス「Up Side Down」、シスター・スレッジ「We are Family」ミック・ジャガー「She’s the Boss」などがあり、ジェフ・ベック、デュラン・デュラン、アル・ジャロウなどのアルバムもプロデュースしている。
そんなナイル・ロジャースが“THE CHIC ORGANIZATION”を引き連れ、4月24日(土)からブルーノート東京とモーション・ブルー・ヨコハマで計7日間の“BOX SET TOUR”をおこなった。
すべての公演で、全員総立ちになってChicサウンドに酔いしれていたのは勿論だが、もうひとつ観客を沸かせたのが「Le Freak」ギター・コンテスト。これは、我こそはという観客の中から5〜6人をステージに上げ、「Le Freak」のイントロ部分を順番に弾いて競い合わせるというガチンコ・ギターバトル。観客の拍手でウィナーを決め、最終日の決勝戦で優勝したプレイヤーには、ナイルがその場でサインする白のストラトキャスターをプレゼントするというもの。3年前にナイル自身のアイデアで始まったこのギター・コンテストは、年々盛り上がりを見せている人気企画。今年も各公演でのウィナーが決まって、決勝戦の行われる最終日の5月2日(土)を迎えた。
ブルーノート東京の客電が落ち早くも場内が熱気を帯びてくると、ナイルを先頭にしたメンバーたちが鳴り物を鳴らしながら客席後ろから登場し、客席を練り歩いてステージに上がっていく。この時点でもう客席はヒートアップ。Chicサウンドの要ともいえる白のストラトキャスターからつむぎ出されるナイルの軽快なカッティングが始まると観客は総立ちになり、「Everybody Dance」「Dance Dance Dance」「I want your Love」のヒット曲3曲ですっかり会場はダンスフロアになっていった。ナイルといえば、自ら「ヒットメーカー」と呼ぶ79年製の白のストラトキャスターが有名だが、今回の公演ではカスタム・ショップ製のストラトキャスターを使っているようだ。演奏は続いて、ナイルがプロデュースした名曲「I’m coming out」〜「Up Side Down」(ダイアナ・ロス)〜「He’s the Greatest Dancer」〜「We are Family」(シスター・スレッジ)のメドレーがさらに観客を煽り、「Chic Cheer」と続いたあとに、ギター・コンテストの決勝戦が始まった。
MCは最近CDデビューを果たしたというケイ・グラント。各公演でウィナーとなった5人と、当日の飛び入り参加を加えた6人のアマチュア・ギタリストたちが順番に登場して、「Le Freak」のイントロ部分を弾きまくる。前半は一人で弾いて後半はナイルと一緒に弾くという夢の晴れ舞台で、みんな臆することなく独自のカッティング・アレンジなども交えながら見事なパフォーマンスを披露し、会場を大いに盛り上げた。優勝者は、第1部ムラモト・ソウイチロウ氏、第2部デイブ・テイラー氏に決定し、ステージ上でナイルにサインしてもらったギターをプレゼントされた。ギターは鷏フェンダー・プロモーションからの提供で、Standard Stratocaster(r) TintのArctic White(メイプル指板)。優勝者にとって一生の思い出と宝物になったことだろう。
コンテストが終ると再び会場はダンスフロアに戻り、「Let’s Dance」「Like a Virgin」といった大ヒットプロデュース曲に続いて、Chicのメガヒット曲「Le Freak」「Good Times」で会場は興奮のるつぼと化しライブは終了。興奮冷めやらぬ客席の中を、登場のときと同じようにナイルを先頭にして退場していった。
今回の公演で何より感じたのは、徹底したオーディエンスへのサービス精神。ギター・コンテストもそうだし、ライブの途中で記者会見よろしく写真撮影タイムを設けたり、観客の中のマイケル・ジャクソンのそっくりさんを「Billie Jean」のイントロでステージに登場させてしまうなど、とにかく楽しんでもらうためだったら何でもやるぜ!というChicを始めた時からの一貫した彼のエンタテインメント哲学を存分に堪能させてもらった公演だった。
ギター・コンテスト優勝者のコメント
ムラモト・ソウイチロウ氏
子供のころからずっと聞いているナイル・ロジャースさんと同じステージに立ててとても光栄でした。ありがとうございました!
デイブ・テイラー氏
今日はすごくいい経験ができました。子どもの頃からシックを聞いてきましたし、ナイル・ロジャーズは最高のギタリスト、最高の作曲家のひとりですから、今夜はただ彼とプレイがしたかっただけで、優勝するとは夢にも思っていませんでした。素晴らしい経験をさせていただきました。アリガトウゴザイマシタ。
ナイル・ロジャース
ギター・コンテストはすごくよかったよ。今夜、フェンダーはストラトキャスターを2本提供してくれたし、参加ギタリストたちはこれまで以上にファンキーだった。次回、僕らが戻ってきたときは、さらにいいコンテストになることを期待しているよ。元気でね。シック・オーガニゼーションからピースとラヴをこめて。
2010年5月2日 2nd Stage SET LIST
1.Hangin’
2.Everybody Dance
3.Dance Dance Dance
4.I want you love
5.Medley(I’m coming out〜Up Side Down〜He’s the Greatest Dancer〜We are Family
6.Chic Cheer
7.Let’s Dance
8.Like a Virgin
9.Le Freak
10.Good Times
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