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UKシングル「Come On」

JPシングル「彼氏になりたい」

UKシングル「Not Fade Away」
シーンのトップを転がり続ける世界最強ロックンロール・バンド、ザ・ローリング・ストーンズ。グループ結成から既に半世紀以上が経っている。1962年ロンドンで結成されたストーンズがチャック・ベリーのカヴァー「カム・オン」でレコード・デビューを飾ったのは1963年6月7日金曜日のことだった。その翌年、64年3月20日、日本デビュー・シングル・レコード「彼氏になりたい」が発売。ビートルズのカヴァーだった。
その頃,中学生だったマイク少年はロイ・オ―ビソン・ファン・クラブの手伝い要員としてキングレコードに出入りしていた。半年後に東京オリンピックをひかえた昭和39年春のある日、キングのTディレクターさんに「今度、ビートルズの対抗馬として売り出そうと思う、聴いてくれない」と試聴室へ、そこで初めて耳にしたのが「ノット・フェイド・アウェイ」。ミックのヴォーカルというか声質にノックアウト。友人たちと65年にストーンズ・ファン・クラブ、彼らの日本応援団を結成した。
以来50年、ストーンズを聴き続け、機会あるごとにライヴを楽しませてもらっている。「スタート・ミー・アップ」の歌詞じゃないけど、彼らは【Never Never Never Stop】、決して止まることはない。

そんなストーンズの2015年の活動開始は<ZIP CODE TOUR>、USコンサート・ツアーである。郵便番号公演と銘うたれた今ツアー、あえてアメリカ大都市での複数回コンサートを外し、中都市での1回ライヴ。
5月20日カリフォルニア州ロサンゼルス/フォンダ・シアターでウォーミング・アップのギグ。
そして24日同州サンディエゴ/ペトコ・パーク(郵便番号92101)でZCTはキック・オフ!ファースト・ナイトを堪能してきた。

街頭にストーンズ・バナー

サンディエゴTシャツ

ジャンパー
23日、89年からストーンズ・ライヴを日本はもちろん海外で何度も何度も体験しているストーンズ仲間ふたりに連れられて、JAL直行便でサンディエゴに飛んだ。会場となるMLBファンお馴染みパドレスの本拠地としても知られるペトコ・パークから徒歩5分のHilton San Diego Bayfrontに部屋をとる。コンサート前にツアー・グッズを購入し、いったん部屋に戻り、それから持ち物最小限にして本番に臨む、これがコンサートを楽しむ基本。もし遠方のホテルだったら、タクシーに1.5往復お願いする(HTL⇒会場前/グッズ購入⇒HTL⇒会場。ものすごく遠い場合は帰りの足を加えて同じタクシーに2往復してもらったこともある)。23日お昼頃チェック・インした後、ティケット他を受け取りに別HTLへ。ペトコ・パーク周辺はサンディエゴの中心地、多くのホテルやレストラン、ショッピング・センターが立ち並ぶ繁華街。ストリートの街灯という街灯にアメリカ国旗とともにベロ・マークをフィーチャーしたストーンズ・ライヴ・インフォ・バナーがはためいている。街中で”ウェルカム・バック・トゥ・サンディエゴ ザ・ローリング・ストーンズ”雰囲気なのだ。いったん部屋に戻ると、LAでウォーミング・アップ・ギグを楽しんできた日本人ファンからメール、「サンディエゴ着、会場正面入り口前で既にグッズ販売中」。早速、走って2分。ツアーT、サンディエゴT、ポスター、オレンジのツアー・ジャンパー…あっという間に1000ドル(どうしよう)。街角で出会う、熟年60代、70代カップルの皆さんの多くが新作ベロTを颯爽と着こんでいる。アメリカのT文化に改めて吃驚させられる。
そして夜はスタジアム、ボール・パークそばのHard Rock Hotel San Diegoで開催された【The Friends Of Sonoko-Dinner in San Diego】に参列した。
Sonokoさんは88年のキース・ソロ・ツアー以来、ストーンズ本体のコンサートだけでも500回以上体験した大阪のまさしく世界を代表するストーンズ・フリーク、女子追っかけ隊長だった。メンバーはもちろんのことサポート・メンバー、多くのスタッフが彼女をとても可愛がっていた。世界各国のストーンズ・ファンから愛されていた。89年以来の良き友人。ニューヨーク、ワシントン、ニューオーリンズ、ボストン、ロンドン、東京、名古屋、大阪、札幌、福岡…いろんなところでストーンズ話し、飲んで、食べて、ダンスして。そんなSonokoさんが50歳になる直前の昨年秋ご逝去された。今回、ストーンズがツアーするにあたってアメリカのAllisonさん、ニュージーランドのRichardさんが幹事になってのお別れの会。ファン・サイト「It's Only Rock'n Roll」主宰者/ノルウェーのBjornulfさん、ファンジン/LOVE YOU LIVEのMarilouさん、サンフランシスコでセラピストしているBarbaraさん…数10人のストーンズ追っかけ隊の兵がSonokoさんを追悼した。会場では、カリフォルニアを代表するRSトリビュート・バンド、アルティメット・ストーンズが2時間ライヴを敢行。
Sonokoさん、今頃は仲良しだったボビー・キーズやボ・ディドリーたちとストーンズ談義に花を咲かしていることだろうR.I.P.Sonoko-san。

グッズ売り場前での筆者

ティケット

VIPパス
いよいよ24日日曜日、コンサート当日、ジェットラグもなくいつものように朝早く起床。ベイフロントをウォーキングしていると足は自然とスタジアムへと向かってしまう。HTLのエレベーターやロビー、ストリート出会う人の多くがベロT。今夜はストーンズだよネ、と話しかけてくるオバサンズ&オジサンズ。ショップを増設して、早くからスタジアム敷地内でグッズ販売が始まった。昨日は未着だったプログラム、本日入荷のツアーTなどをまた購入してしまう(冷汗)。
そして、ストーンズ演奏開始は午後9時半という極秘情報(でもないか)を入手したので、早めに腹ごしらえと、HTLに隣接するフォックス・スポーツ・サン・ディエゴ・グリルのテラス席でミディアム・レアのサーロイン・ステーキw/テンコモリ・ポテトフライをぱくついていたら(ワインはコンサート終了後までガマン)、5時ちょっと前だと思う、スタジアムの方角からギター音が…、B.B.キング・ナンバーらしい。当日のサウンド・チェック&リハ、もちろん本番さながらの音量でびしっときめている。「オール・ダウン・ザ・ライン」「キャント・ユー・ヒア・ミー・ノッキング」「ムーンライト・マイル」「ドゥーム・アンド・グルーム」「ビッチ」「無情の世界」。ドームではない、スタジアムなのでそのヴォリュームたるや凄いのだ。今夜はそれこそこの近隣で何十万人という人々がストーンズ・ライヴを楽しむことになるに違いない。僕らのまわりのベロTオジサンズ達も、席を立ちより聴きやすいスポットに走り、携帯で友人たちにリハが始まったぞと連絡している。みんな50代以上、という僕は60代半ばなのだ。
カリフォルニアにしては少々涼しい。ティケットはホルダーにしっかり挿入、首にぶら下げる。取材用のノート&ペン、iPad-mini、そしてこれも忘れてならない、僕の背丈(175センチ)より高い人が前に来た時用と日本から持参したガム・テープで固定した少年サンデー3冊。これって良いアイディアでしょ?ボブ・ディラン&ストーンズ・フリークのみうらじゅんさんにも大絶賛された。

コンサート直前 VIPルームにて
w/バナード・ファウラー

ダリル・ジョーンズ

チャック・リヴェール

開場直後

オープニング・アクトを務めた
ゲイリー・クラーク・ジュニア
午後6時過ぎドア・オープン。長蛇の列、この光景はどこも同じ。ストーンズ歴が長い業界人ということでVIPパスをいただいたので、関係者席から入場、スイマセン。VIPラウンジに入ると、皆さんニコニコ&ワクワク。軽食のほかアルコールも用意されているけど、ここでもガマンガマン。アメリカ初日ということもあって、地元やロサンゼルスからのマスコミ関係者も多い。日本のストーンズ発売元のユニバーサルミュージックのA&Rマンさん、レッド・シューズ/Mon-chanら日本の方々ともセイ・ハロー。そんな中にまず姿をみせたのはコーラスのバナード・ファーラー「Hey Mike Koshitani」久々にいろんな話をする。続いて現れたベースのダリル・ジョーンズとはちょっぴり音楽談義。そして、チャック・リヴェール(キーボード)、実にジェントルマンな彼はいつも温かくファンを向かい入れてくれる。トニー・ラッセルら何人かのスタッフとも挨拶を交わした。スタンド席から、まだ明るい会場内を撮影。そうしているうちに今夜のオープニング・アクト、ゲイリー・クラーク・ジュニアが登場。テキサス州オースティン出身の期待の星、ストーンズお気に入りのアーティストだ。我が国でもデビュー・アルバム『ブラック・アンド・ブルー』(このタイトルだけでもコアなストーンズ・ファンは購入してしまうのだ、スペルはちょっと違うけど)は話題を呼んだ。その作品集からのファースト・シングル「エイント・メッシン・ラウンド」、「プリーズ・カム・ホーム」「ブライト・ライツ」等を演奏。ブルース・フィーリング溢れた演奏に温かい拍手が送られた。
そして午後9時32分、ZIP CODE TOURの幕が切って落とされた。「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」、キースのギターでのスタートだ。ミックが大張りきり、元気いっぱいのアクションでシャウトする。時代の流れに押され一時サイケデリックな世界へ足を踏み入れた彼らがストレートなロックンロールの王道に帰って来たことを証明した68年のヒット作、20世紀を代表するロック・スタンダード。70年代初頭を彷彿とさせるグラム・タッチなパープル・ジャケットのミック、ほかの3人の衣装はブルーが基調、サンディエゴ・パドレスを意識して?!ロニー・ウッドも軽快に飛ばしている。チャーリー・ワッツのドラミングも1曲目だというのに物凄い勢いだ。これらからのライヴに胸ふくらむ。
ミックの挨拶にかぶるように、おっとロニーはまだ飲水中、キースは♪たかがロックンロール でも俺たちは大好きなんだ♪まさにストーンズ・アンセム、「イッツ・オンリー・ロックンロール」のイントロに突入。観衆も一緒になって大合唱。ミックがもっともっと動き、もう後半かなと勘違いしてしまう。 3曲目は「オール・ダウン・ザ・ライン」、初の2枚組LPとなった72年の『メイン・ストリートのならず者』収録ナンバー。ミックは歌い始めたところでジャケットをとり下手側へ。もうすっかりファミリーの一員となったティム・リースと故ボビー・キーズの後任となったカール・デンソンのブラス・セクションもジョイン。日本にもやって来たことのあるカールはバンド・イントロダクションのところでミックが紹介した通りサンディエゴ出身だ。ちょび髭が似合うマット・クリフォードもステージにその姿を見せた。ロニーのギターが大きくフィーチャーされ、とても良い味を出している。そこをしっかり分かっているミックがロニーに絡む、いい感じだ。キースのギターの弾き方も実に楽しそう。ダンス・ダンスのミックをキースはニコニコしながら見つめる。そんなキースが時折、観客の方ではなく、向きをバンドの方に変えて、まるでセッションを楽しんでいるような雰囲気。ロニーに前の方を向いた方がいいんじゃないと言われているようだ。ミックとは180度違うキースのこのキャラがストーンズというグループのバランスをよくしている。
続いてストーンズ・ライヴでは欠かせない「ダイスをころがせ」、お得意ソング。このナンバーも2枚組LP『メイン・ストリートのならず者』から。ミックは花道先端までやって来て、マイクをズボンに差し込み手拍子でファンを煽るいつものしぐさ、スタジアムが完全にひとつになる。グルーヴ感あふれた演奏、老いも若きも飛び跳ねる。日本に比べ、サンディエゴの観客年齢層は高い。ミックは以前、ストーンズは3世代にわたって支持されていると語っていたけど、今や平均年齢が70を超えた彼らは3.5世代、いや4世代の人々に愛されているのだ。そんなミックのエンディングのポーズは実にセクシー。『メイン・ストリート~』からの2曲を堪能していると、1973年1月にハワイ/ホノルル・インターナショナル・センターで初体験した若き日のストーンズ・ライヴを思い出す…、ミック・テイラーが正式メンバーだった頃。でも、そんな思い出に浸っている暇はない。
最新楽曲「ドゥーム・アンド・グルーム」、ミック作品。僕らをアグレッシヴに攻めてくる。ストーンズはアーカイヴ・バンドじゃない、今を生きる最高のロック・バンド。だからこそZIP CODE TOURを楽しもうと日本から飛んできたのだ。その甲斐あってか、3年前からセットリストに加えているこのナンバーのライヴ仕上がり、この日が最高だったのだ。最初はギターを携えていたミック、中盤からはヴォーカルに専念、しっかりシャウトする。完成度の高さに度肝をぬかされた。
71年作品集『スティッキー・フィンガーズ』がスーパー・デラックス・エディションとしてファンの前に登場することもあって、ZCTでは毎回、数曲このアルバムからパフォーマンス。この日はファースト・シングル・カット・ナンバー(わが国で71年5月だったと思うけど、この曲がシングルとしてリリースされた時ライナー書きました。SF/SDEにはいってます)を除いて3曲登場。まずは「ビッチ」、ファースト・シングルのカップリング曲、B面ソング。この日はOAを務めたゲイリーがジョイン。最初は少し緊張気味だったけど、ロニーやキースとギター大会になるとぐっとリラックス、持ち前のうまさを発揮していた。それにしても、ミックはハイテンション。ブラックのロングT(USリック・オーエンス)1枚で歌いまくったのだ。
続いては最近のインタビューで、ミックがとても気に入っていると述べている「ムーンライト・マイル」。UKデッカと決別、自らのレーベル、ローリング・ストーンズ・レコードを設立すると発表した直後の70年8月~10月にかけて彼らはヨーロッパ8カ国を回るコンサート・ツアーに出た(セットリストには次アルバム、SFに収められることになる楽曲も加えられていた)。移動は列車、ミックはホームシックにかかった。列車の窓から夜空に浮かぶ月を見ながらこの作品が浮かんだ。ドラッグ・ソングでないことをミックは強調。ツアー終了後、彼のカントリー・ハウスでミック・テイラー、チャーリーと曲を完成させ、レコーディング。そのレコーディング時と同じくチャーリーはマレットをこの日のステージでも使っていた。実にロマンティックなオリエンタル・ムードあふれたSF最後に収められたこのナンバー、ワーキング・タイトルを「The Japanese Thing」といった。エンディングではミック&キース、ザ・グリマー・トゥインズ(燐光兄弟)が並んで笑顔を見せながらギター・プレー。大拍手だ!
そして「キャント・ユー・ヒア・ミー・ノッキング」、メリハリ聴いた実にパーカッシヴなサウンド展開、ミックが右手にマラカスふたつ、コーラスのリサ&バナードもタンバリン、そしてバナードはその後ボンゴも叩いている。ロニーのギターがぐっと強調され、とても素晴らしい音色で観客をうっとりとさせる。ミックはその演奏ぶりを称えるように左手をロニーの肩へ…。終盤、ここでもザ・グリマー・トゥインズが顔を見合わせながらニコニコ!ファン感動シーン!! ミックの「サンキュー、サンディエゴ」の後はファン投票、インターネット・リクエストから。この日は「ストリート・ファイティング・マン」。タイトルからしてズバリ60年後半の世界の動向をダイレクトに表現している作品。現在もシーンを堂々と闊歩するストーンズが歴史の証人でもあることを実感させられる。スタジアムを埋めたその時代をリアル・タイムで通過した僕も含めての多くの70代から60代にとって感慨深いものがある。左、右に関係なく、僕らは時代変革の大波の中で大人になっていった。そんな時代を懐かしがっているかのように、メンバーたちは楽しげにこのナンバーを演奏しているように映る。チャーリーとキースはニコニコ、ロニーは煙草を…。そして、ティムがソプラノ・サックス、マットがキーボードでサウンドをぐっと厚く(&熱く)している。
続いても60年代後半のヒット作。というより、20世紀のロック・スタンダード、ミック・テイラーが参加してのグループ最初のシングルとなった「ホンキー・トンク・ウィメン」。69年のUK&USナンバー・ワン・ソング(シングル盤のジャケットが若干異なる…マニアックな話しでした)。これまたパーカッシヴなイントロ、リサ&バナードに加えチャック・リヴェールも最初は打楽器。ストーンズの基本中の基本ともいえる実にダウン・トゥ・アースなサウンドが見事としかいいようない展開をみせているのだ。そこでアメリカ南部のロックなテイストをぐっと深めているのが82年以来のストーンズ・ファミリー、チャック・リヴェールのローリング・ピアノ。彼は10代の頃からプロとしてアメリカ南部のロックンロール・シーンで活躍。オールマン・ブラザース・バンドのメンバーだった。花道先端まで進んだミックが、マイクをズボンに差し込み手拍子でファンを煽るいつものしぐさ、スタジアム全体が大きく揺れ動く。メイン・ステージに戻るスキップも実に軽やかだ。

コンサート翌日
w/マット・クリフォード
ミックがバンド・イントロダクション、何故かマットが忘れられていたけど、次公演からは大丈夫だった(別にふたりは仲が悪いわけではない。マットはミックの良き話し相手、25日夜、某所で歓談するふたりとその仲間たちに遭遇してセイ・ハローさせてもらった)。ミックがチャーリーの手をとってステージ前方へ引っ張っていくシーンが何ともほほえましいのだ。
そして恒例のキース・コーナー(ミックはお休み&衣装チェンジ)。89年のUSツアー、ワシントンでもボルティモアでもニューヨークでも、いつもこのコーナーに入るとそれまで総立ちだった観客は椅子に腰をおろし、20パーセントくらいの人々はトイレorビールオカワリ購入タイム…。翌年の初来日公演の際、キースと何度か話しをしたんだけど、日本ではそんなことはなく自分が思っている以上に人気があるのに吃驚していた(煙草/Keithワン・カートンをプレゼントしたらとっても喜んでいた)。15年のサンディエゴ、観客は「キ~ス!」いぶし銀のキース節でファンを唸らせる。89年、ザ・グリマー・トゥインズがストーンズを存続させることになり、その第一弾アルバムとして発表した『スティール・ホイールズ』最後に収められていた名曲「スリッピング・アウェイ」。80年代後半、仕方なくだったけどソロ・アクティヴィティに励んだこともプラスになってこの素晴らしい楽曲が生まれた。じっくりと味わう。曲終りで、腰をダウンさせ肘をついてのお得意のポーズ。近々ソロ・アルバムっていう噂あるけど?!
続いての曲を紹介するキース、「キャント・ビー・シーン(ウィズ・ユー)」。『スティール・ホイールズ』からもう一曲だ、イントロに入るとロニーが慌てて飛んでくる。曲目が違っていた。キース、動じない、こんなシーンに何度出会ったことか…。改めて「ビフォア・ゼイ・メイク・ミー・ラン」。70年代後半のアルバム『女たち』収録、当時はキース復活ソングとしても注目を集めた。ここでもキース節が噴出。ロニー&キースのギター・バトルも十分楽しませてくれる。右手をあげてのあのいつものポーズをびしっと決めてくれる、キース・フリーク、大拍手。どうしてあのポーズをと尋ねたことがある、「肩と腕を解すためさ、ワハハ…」。

ロニー・ウッド☆アート展
ライヴは後半に突入していく。レザー・ジャケットを着込んだミックの上手すぎるブルース・ハープから展開していく「ミッドナイト・ランブラー」。ストーンズ・オリジナル・ブルースだ。テンポ・アップしていく中で、ロニーのギターがぐっとフィーチャーされ、ミックが彼を前へと押しやる。ミックはジャケットを脱いで右手でぐるぐる振り回す。映像を見ているかのようなストーリー展開。ロニーの今夜何枚目かのイエローTシャツのデザインは自らのイラストだ。彼は画伯なのだ、日本でも何度も絵画展が開催された。サンディエゴでも23日&24日、ハード・ロック・ホテルで【The Art of RONNIE WOOD & Rolling Stones MEMORABILIA】。ミック花道を進み&戻りながらのオーディエンスとのコール&レスポンス♪Oh Yeah !♪、場内は興奮の坩堝。もちろんその後はチヤーリーも大活躍の”ボストン~ドスン“パートへと突入。ミックの肉体美に感心させられるステージング。テンポ・アップしながら大きく盛り上がる。ここでのキースの笑顔を見せながらのプレーが忘れられない…。
ブルースからディスコへと曲目が変わる、78年の「ミス・ユー」。ソングライター・クレジットがここから<Keith Richard ⇒ Keith Richards(本名)>になった。当時世の中はフィーヴァー、フィーヴァー、ディスコ全盛期。我が国だって新宿、六本木を中心に全国津々浦々にディスコ乱立。かくいう筆者もディスコでのダンス・コンテストMC、MRO「ディスコ・ジャングル」でDJしていた。ストーンズが販売用の12インチ・シングル・レコードとして初めてリリースしたのもこのナンバーだった。12インチでは8分半以上。レコードでのイントロブルース・ハープは何度かシカゴや東京で会ったことのある良い奴、シュガー・ブルー。USナンバー・ワン・ソング、同国R&Bチャートでもトップ40入りしている。ライヴではミックのギターからスタート、実にダンサブルな軽快な展開。

DVD「バックコーラスの歌姫(ディーバ)
たち」(コムストック・グループ)
ステージ背景のスクリーンにはネオンサイン・タッチにエフェクトされた演奏シーン、それがぐっとゴージャスなディスコの雰囲気になっていく。ダリルのベースもグーンと響き渡る。そしてあのBステージを思い出させるシーンがついにここでやって来た、ミックだけでなく花道先端にキース、ロニー。3人での演奏にその周辺のファンは大いに盛り上がる。それだけではない、後方や横の観客もどんどん花道周辺へ、大混乱、でもそれがアメリカでのロック・コンサート。日本でも06年東京ドームはそんな雰囲気だった。メイン・ステージに戻るところでのナイキ・スニーカーで頑張るキースの軽やかな走り込み姿に大拍手。 「ギミー・シェルター」もライヴでの定番。メリー・クレイトンとのデュエット・ソングとして知られるが、近年ではもうすっかりアカデミー賞/最優秀長編ドキュメンタリー賞受賞の映画『バック・コーラスの歌姫(ディーバ)たち』に出演していて、昨年の東京ドーム公演ではバンド・イントロダクションのところでミックにその受賞おめでとうと言われていたリサ・フィッシャーとのコラボ・ソングとしてのイメージが強い。ふたりのソウルフルでセクシーな雰囲気を満喫できるストーンズR&B楽曲。リサが花道で絶唱、見事だ。彼女がクリス・ボッティ日本公演のゲストでやって来た時のステージも思い出す。ソロ・アルバムも出して欲しい(もちろんミックほかクリス、マドンナほか多くのゲストを招いて…)。
16曲目は「スタート・ミー・アップ」、ミックは最近自らのツィッターで「日本で初めてプレーしてから25年…」(日本語だったのだ)というコメントを発表しているけど、90年2月の初来日公演(東京ドーム10回。全部、参戦させていただいた)でのオープニング・ソングがこの楽曲。何曲目でもサァ頑張るぞという気持ちにさせてくれる。花火も上がる。イントロでキースが花道を進み出ての演奏。ミックは上手側でシャウト、ロニーのギターがまたまた爆発。キースも負けてはいない、ガンガン突き進む。ミックは花道に進み♪never never never stop♪。歌詞がその後のストーンズの姿になる、81年アルバム『刺青の男』から。
続いてはステージ両サイドから花火が炸裂、スタジアムが真っ赤なスモーキーな世界へ、「悪魔を憐れむ歌」、ミックも赤&黒のガウン。♪woo hoo♪、観客もジョイン、徐々にドラマティックな大作へと進行していく。ステージ前のライティング装置もステージングを華々しくスケール・アップさせている。そんな中で、チャーリーがヘッドホンして演奏しているのが印象的だった。

JPシングル「無情の世界」

USシングル
「(I Can’t Get No)Satisfaction」

「サティスファクション50周年」
12インチ輸入盤のみ
(UNIVERSAL MUSICより発売)
そして、イントロが始まったところでしっかり水補給したミックが歌い出す、「ブラウン・シュガー」。ここでも激しくステージ左右を走る。アルバム『スティッキー・フィンガーズ』からのファースト・シングル・リリースされた70年代初期の名作中の名作。イギリスでは3曲入りマキシ・シングルで登場。故ボビー・キーズのサックスを思い出させてくれる。そんなボビー後任のカールの演奏ぶりにキースも満足気だ。ミックがリサ&バナードをステージ・センターにスタンバレと合図。この楽曲での定番、観客との♪yeah yeah yeah ~ woo!♪をまずステージ中央で3回。そして、花道先端でも3回。そんな時、近くのファンからプレゼントが投げ込まれた。きちんと包装されたものだったけど、ミックはちらっと横目でチェックしていたけどそのまま…(以前は下着とかいろいろなものが)。スキップで軽やかにメインに戻り、フィニッシュ。手を振り、投げキッスのミック。メンバー全員がステージから去る。
ファンの歓声&拍手は鳴りやまない、もっとストーンズを観たい!聴きたい!!WE WANT STONES!!!
アンコール・ナンバーは厳かな雰囲気の中で始まった。ステージの両サイドに位置した20数名の若い男女のコーラス隊、カリフォルニア州立大学ロング・ビーチ校チェンバー・クワイアの素晴らしい歌声、「無情の世界」(良い邦題でしょう?ちょっと自慢、私が命名させていただきました)。マット・クリフォードのこれまた厳粛な雰囲気を高めるフレンチ・ホルンが加わる(スタジオ・ヴァージョンではアル・クーパーが吹いていた)。ミックはアコースティック・ギターを携えしっとりと歌う。タイトルのところにくると観客も一緒になって合唱なのだ。アルバム『レット・イット・ブリード』でのザ・ロンドン・バッハ・クワイアのコーラスを思い出す…。ここ数年のコンサートでこの楽曲をパフォーマンスする際のオリジナルをきっちりと守っての構成には感動させられる。展開はぐっとテンポ・アップして重厚なスケールの中で後半からエンディング…。ステージ演出が年々進化している。

新聞 5月25日付 San Diego Union Tribune

メンバーやスタッフに配布されるセットリスト
15曲目に注目(笑)
そして今年は「サティスファクション」50周年、ファイナルは65年、初めて全米で1位を記録した20世紀を代表するロック・スタンダードがエキサイティングにスタートする。そんな中、ブラック・ハットをかぶった御大ミック・ジャガーは実に冷静に、腰に取り付けたイア・モニターをしっかり調整してから歌い始めるのだ、さすが。花道中間点まで進む。一方、左腰にパープル・スカーフをぶら下げたキースが下手側に…。ロニーは右手に煙草を挟みながらの演奏。チャーリーのドラミングが開始からここまで、一寸のぶれもなくストーンズ・サウンドを引っ張っている。Hey Hey Hey Hey Hey thank you San Diego!花火が華々しく大きく大きく打ち上げられながら世界最強ロックンロール・バンド、ザ・ローリング・ストーンズZIP CODE TOUR初日、サンディエゴ公演は終焉した、午後11時47分。演奏したミュージシャンたちが並んで一礼、(下手側から)マット/チャック/リサ/ロニ-/バナード/ミック/キース/チャーリー/ダリル/ティム。あれひとりいない、地元の演奏で張り切り過ぎたのかな、カールの姿が…。そしてメンバー4人の揃い踏みは(下手側から)ミック/ロニー/キース/チャーリー、深々と一礼してステージを去る。ロニーが投げキッス。キースはチャーリーさんお先にどうぞ。ミックの実にすがすがしい雰囲気がとても印象的だった。
ザ・ローリング・ストーンズ・ライヴ、マダマダツヅクヨ!2016年ジャパン・ツアー?!
(Notes by Mike Koshitani)


ザ・ローリング・ストーンズ
『ステッィキー・フィンガーズ』
発売日:2015年6月10日発売

<3CD+1DVD+1EP>
スーパー・デラックス・エディション
19,980円税込(18,500円税抜)
品番:UICY-77211
日本盤のみSHM-CD仕様
輸入国内仕様
初回生産限定盤

スーパー・デラックス・エディションを購入する

<2CD>
デラックス・エディション
3,950円税込(3,657円税抜)
品番:UICY-15382/3
日本盤のみSHM-CD仕様

デラックス・エディションを購入する

発売元:ユニバーサル ミュージック


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