今年できたばかりのJCBホールを、武道館の縮小版みたいだと言う人もいる(確かにそれも言える)。だが、ぼくはロイヤル・アルバート・ホールを連想した。
このホールで行われた『ROCK LEGENDS』の2日目に登場したのが、スモーキー・メディスンだ。
メンバーは、Char(g)、金子マリ(vo)、鳴瀬喜博(b)、藤井章司(ds)、佐藤準(key)。彼らが活動したのは'73〜'74年で、公式デビューはしないまま解散している。
だから、MCでCharが「アマチュア・バンド、スモーキー・メディスンです。アマチュア・バンドのコンサートにこんなに大勢来てくれてありがとう」、そしてナルチョ(鳴瀬喜博)が「34年経ってやっと初めてのソロ・ライヴです」と言ったのは、あながち冗談でもない。
このアマチュア・バンドの再結成ライヴは、本当に素晴らしかった。
普段ならCharは、ギターとボーカルを担当する唯一のフロントマンだが、このバンドでは一ギタリストに戻ることができる。
その、一ギタリストとしての佇まい、みたいなものが最高に良かった。
プレイ自体がそれほど変わるわけではないが、それでも歌わなくていいぶん細かいこともできるし、歌に大きく絡むフレーズなども繰り出せる。今回は、そういうところも楽しませてもらった。
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写真 そして、金子マリ。
力強さと繊細さを兼ね備えたヴォーカルのみならず、70年代のロック・クイーンそのままの見た目や仕種(あんなにかっこよくタンバリンを叩ける人はいないと思う)まで含めての、シンガーとしての存在感は圧倒的だった。
この夜、間違いなく彼女が日本でいちばん輝いている女性だったと、ぼくは断言したい。
斜めに構えたナルチョのベースから繰り出される怒涛のチョッパーには、心と体が自然に踊り出した。そして、そのアグレッシヴなプレイとは対照的なニコニコした顔には、こちらまで嬉しくなってしまう。
でもそれは、ナルチョだけではない。4人全員が、本当に楽しそうに演奏しているのが非常に印象的だった。
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写真 今回の目玉は、セット・リストの真ん中にドカンと入ったジェフ・ベック・グループ(正確に言うと、第2期ジェフ・ベック・グループ)・コーナーだろう。
もともとスモーキー・メディスンは第2期ジェフ・ベック・グループの路線を目指したバンドだった。だから、彼らの34年前の熱い気持ちや思いが伝わってくるような気がして、ぼくはほとんど涙しそうになった。
ここでのCharのギター・プレイは、Charっぽいジェフ・ベックであり、ジェフ・ベックっぽいCharだったとでも言えばいいだろうか。その絶妙なバランスがたまらなかった。
ジェフに憧れ、ジェフみたいに弾けるように努力を重ねていたに違いない若い日の彼の姿と、ギタリストとして確固たる個性を築き上げた今の彼の姿が、妙にオーヴァーラップして見えもした。
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写真 実を言うと、ぼくは今回のスモーキー・メディスンの再結成に、一抹の不安を覚えていた。メンバーの息は合うのだろうか? 観る者を感動させる演奏はできるのだろうか? 楽しい気持ちでプレイしてくれるだろうか? …………
それらはすべて杞憂だった。
ライヴが終わったとき、今回の再結成を一時的なものにするのではなく、なんとかまたやってくれないものかと、ぼくは強く思った。
少なくとも、あと何回かはライヴを観たい。
いや、できることなら、何回でも、何回でも、観たい。
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<セット・リスト>
01.Baby's Universe
02.Street Information
03.永遠の愛を棒ぐ
04.Get To Paradise
05.Situation
06.I Got To Have A Song
07.Tonight I'll Be Staying Here With You
08.Glad All Over
09.Going Down
10.Song For My Life
11.Love You More (〜A latchkey)
12.Strange Space
13.Joy To The World
14.Show What You've Got Inside Of You

(アンコール)
15.Never Ending Road
16.Honey
17.Don't Cry My Baby
18.R&R 列車

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